死産届と火葬の予約
家で休んでから,役所に行った.
退院して思ったのは,
私以外の人は今までと変わらない日常を送っているんだなあ・・・
ってこと.
何もかも普通な町が動いていた.私はこんなに悲しいのに.
役所に付いて,死亡届けの窓口に案内された.
黒髪をぼさぼさに一つに束ねた化粧っ気なしのメガネを掛けた女性が対応してくれた.
「正直,骨は残らないと思いますけれど,拾いますか?」と聞かれ,何とも言えない悲しさがこみ上げた.「拾います」と答えたら,その女性は,<拾う>の項目に丸をして淡々と進めていった.
火葬の希望時間を聞かれ,土曜日をお願いした.
早めに空に返したほうがいいとうちの親戚たちは不幸があるとそんなことを言っていたから日曜よりは土曜日のほうをおねがいした.
「朝10時と14時が空いていたはずですが,14時のほうが火葬場にとって都合がいいんで14時でいいですか?」
なんだそれはって思ったけれど,時間に特にこだわりがなかったのでそれでお願いした.
そのあと,女は,予約の電話を火葬場に入れたんだけれど.「土曜日は全て埋まりました.」と・・・.
「なので,翌日の日曜の10時と14時が空いています.10時でもいいですけれど,14時のほうが火葬場はいいと思うんで14時にしますよ」
みたいな言われ方をし,もうどっちでもいいのでそれでお願いした.
そんな対応ある?10時がそんなに嫌ならさ,
10時空いてるって言わないほうが良いんじゃないの?
って今となったら言ってやりたい気持ちになるけれど,あのときは無理だった.精神的にぎりぎりだったもの.
日曜14時で決まり,そのあとの手続きは年配の男性に変わった.
この度は・・・と頭を深々と下げてくれて,とても礼儀正しい方だった.
決定事項の確認をしている時,「骨は拾いますね?」と聞かれた.
なんだか不安になったので,「うちの子はとても小さくて,先程の方は骨は残らないと言っていましたが,そういう場合はどうしたら・・・」と聞いてみた.私の声は悲しみで震えていたかもしれない.
そうするとその男性は,確かに骨は残らないかもしれないけれど,灰は残るから灰を手元に残すのはどうかということを,静かに丁寧に教えてくれた.
そして,骨壷についての説明もしてくれた.用意してきてもいいし,火葬場で普通の白いものを購入しても良いとのこと.
すべての手続きが終わると,その人は沈痛な面持ち?な顔で,深々と頭を下げて送ってくれた.
ぼろぼろな私は少し救われた.