火葬場という場所で.
土砂降りの中,火葬場に向かった.
ナビの示す方に車を走らせていくうちに,
建物がまばらになっていった.
さらに進んでいくと建物はまったくなくなり,
まわりには木くらいしか見えなくなり,
すれ違う車も1台位しか通らなくなった.
土砂降りのせいもあって,とても心細くなった.
しばらくして火葬場の門が見えて,
敷地内を奥に進んでいった.
それでもまだ建物は見えなかった.
暗く,とても寂しい道だった.
ようやく建物が見えた.
入り口には黒いスーツを着た女性が立っていて,
深いお辞儀をしていた.
私は,この子が雨に濡れないように,
先に入り口のところで下ろしてもらった.
名前を伝え,中に通してもらった.
夫は駐車場に駐めてから,合流した.
最初に事務所に通され,書類を提出したり,
料金を払ったり,骨壷を預けたり,
そんな手続きを済ませた.
ふと,黒板を見ると,
スケジュール表が目に入った.
1時間おきくらいの間隔で,名前と年齢が書かれてあった.
朝から何人も焼かれていったみたいだった・・・.
ここではそれが普通のこと.
ここの場所だけ,日常とは違う場所みたいな感じがした.
この世と,あの世の途中みたいな場所.
はやく来すぎてしまったようで,
待合部屋で待っているように言われた.
広い和室に私たちはすみのほうにぽつんと座った.
すぐにエンゼルボックスの箱を開けて,顔を見た.
入れたものたちはきちんと入れた時のままになっており,
花びら一枚にいたるまで,その場を一切動いていなかった.
だから,とてもきれいな状態でうちの子は眠っていた.
安心した.
次に呼ばれたら,もう最後だから,
ずっと見つめた.
見つめても見つめてももっとずっと見つめていたいと思った.
夫と話をした,
ドライブ楽しかったよね,
海にも神社にも行ったし,
神様にちゃんと空に連れてってもらえるようにお願いしたし.
やりたいことはやったよね.
きっとこの子は幸せだった.
生まれる前に亡くなったのに,
幸せもなにもないかもしれないけれど.
それでもできるだけ,なにかしたいという気持ちは,
いつでも心にあって,
親というものは,子どもに対してそう思うものなのかもしれない.
生きて生まれても,死んで生まれても.