火葬 さようなら 空へ
広い部屋から,火葬を行う部屋へ移動した.
さっき途中で見た部屋.
焼く装置が6号機くらいまでずらーっと並んでいる大きな部屋.
脇の方に,4っつほど骨壷が並べられていた.
うちのだけかわいらしい.
正方形の形のトンネルみたいな空洞があって,
そこから,垂直にベッドのような台車がのびていた.
そのベッドの上に,エンジェルボックスと絵本が置かれた.
うちの子はとても小さいので,
ベッドの上の方に,本当にちょこんと.
担当の男性は,うちの子が眠るベッドを空洞の中へ入れた.
一連の流れがとてもはやくて,
待って,もうちょっと一緒にいさせて欲しい.
そう思った.
そんなことはできないことだとわかっていても,
待って,もう少し待って,
そう言いたくなった.
きっと,どんなに一緒にいたとしても,
離れる時は,こう思うんだろう.
でも,待ってはくれない.
扉の前の方に回ると,
暗い空洞の中に,エンゼルボックスの頭が少し見えた.
とても暗い中で,一人ぼっちでいってしまう.
そう思うとかわいそうでたえられない.
男性が,装置の説明をはじめた.
「ボタンが2つあり,1つは,扉を閉めるボタン.
1つは,火が着くボタンです.」と.
担当の方は,私たちに操作をするように,
でも,担当の方が代わりにやってもいい,ということだった.
私は,絶対にできない,と思った.
そんな残酷なことは絶対にできなかった.
自らの手で,そんなことはできない.
でも夫は,「やります」と言って,ボタンの方へ進んだ.
夫は優しく私に,「押すよ,いい?」と確認して,
そして,ボタンを押した.
機械音と共に扉が動いて,
エンゼルボックスが見えなくなっていって,
完全に扉はしまった.
息が止まりそうになった.
旦那はもう一度,私に,「押すよ,いい?」と確認して,
もう一つのボタンを押した.
ゴーッと音がしたと思う.
その時私は,
ああ,終わった,終わってしまった.
この子との日々が今終わってしまった,と
体が脱力してしまうような,力が入らないような感覚になった.
この子は,空に行くんだな
そう思った.